テクノーラ社-社内報
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■ INTERVIEW : 016  

森田清次
森田編集室
インタビュー 04/04/25

○ 編集という作業でやっているのはどういったことなのでしょうか?

一言で言うのは難しいですが、大雑把に言えば撮影済みの素材を放送できるようにするということでしょうか?
その中に、台本にあわせ台詞の間や動きを観る側にストレスなく観てもらえるようにするのも大切な部分です。そのほかに時流に乗った機材の導入、フォーマットの知識が必要とされます。
当方では一貫して業界標準?のAvidを編集機として使い続けています。コンシューマー仕様の物でも作業は可能ですが、同じ仕事をするにも、「ハリウッドの映画制作と同じ機材を使っているんだぞ!」という満足感や、「それを使ってアニメをやっているんだ」という自分の意識も作品作りに反映するような気がします。特にAvid Media Composerという機種は24コマ編集にも対応しており、劇場版作業等の時に何の不安も、問題もなく進行していきます。
具体的な作業としては、たとえば今回の「プラネテス」の場合(どの作品もそうなんですが)、非常に人間関係の気持ちの移り変わりが激しく、難しくかなり苦労しました。私の編集上のモットーは、各キャラクターになりきり台本を読みながら進めることです。普通に棒読みではなく感情を込めてそのキャラになりきります。その点では監督の谷口さんと協調できますね。ですから私事ですが、編集中は一切電話も取りませんし、終わったあとはかなりの疲労感が出ます。そんな訳ですので、いただく素材が全てになります。昨今の(何処とは言いませんが)コンテ撮やレイアウト撮での作業の強要は如何ともし難いですね。なんせ画が解らないので感情の移入が出来ないのです。(編注:コンテ撮とは、コンテの絵をそのままスキャンして、予定の秒数だけ並べて撮影し、擬似的にフィルムを作ることを言う。主にスケジュールが原因で、他の作業を同時進行で進めるために使っている。レイアウトをスキャンしたものをレイアウト撮、原画だと原撮というように、撮った工程によって呼び方が違う)
具体的な作業としては、最初の編集作業のあと音響さんで音入れ作業があり、最終的にダビング(編注:映像に合わせて、役者の声や音楽、効果音を入れること)が終わった音入りの素材をまたAvidに取り込み最終的な完成作業になります。そこでは、音にあわせて細かい修正作業をしていき、ポスプロ(編注:ポストプロダクション。ビデオ編集のことをこう言うことがある。プラネテスでは株式会社キューテックさんにお願いしている)さんに渡すデータ作りをします。

○ アニメ『プラネテス』に関わることになったキッカケはどんな風だったのでしょう?

監督の谷口さんからのご指名をいただきましたもので。

○ 編集の仕方はセルからデジタルになったことよって変わりましたか?

今までのフィルム編集と比べ、遥かに肌理(きめ)の細かい作業が可能になり、かえって以前より時間がかかるようになりました。でもその分完成品に関して満足のいく仕上がりになると思います。

○ 編集という仕事のやりがいは何でしょうか?

前項と重複しますが、肌理の細かな作業のほかに、デジタルになり各パートがボーダーレス化してきました。今までの編集作業以外にどんな分野でどんな協力が出来るか模索中です。
編集の仕事とは、前面に出てはいけないし、かといって下がっていてもいけないという微妙な立場の職種ですね。作品のキャラクターの性格付けや、時代背景、世界観などをいち早く自分のものとし、監督との共同作業の手助けという立場でしょうか?映画などはかなりの監督さんは自分で編集をなさいますよね。そうして作業を終え、完成品を観て、一部の隙もなく(自己満足的な観点からですが)仕上がったときは満足感が得られますね、たとえ他人が何と言おうと!!その些細な満足感に支えられて30年以上もこの仕事をやっているんでしょうねえ。デジタルになりPCがあれば誰でも編集が出来る時代ですからうかうかしていられません。如何に自分に付加価値を見出し、それをアピールできるかがこれからの課題ですね。

○ 今後こういう仕事をやりたいと思っている人に必要なものは何でしょうか?

まず、好奇心!何事にも触手を伸ばすバイタリティーさが欲しいです。自分というものを客観視せず自己をアピールすることが必要です、
それと他人とコミュニケーションが取れないタイプの人はいただけませんね。
学校も職場もデジタル化が進み、気がつけば一日誰とも喋らないという日があると思います。それは自分から打ち破り周囲と意思の疎通を図ることが出来る人材が求められるとおもいます。技術は後から付いてきます。

ありがとうございました。

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