テクノーラ社-社内報
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■ INTERVIEW : 014  

山手 実
ビデオ編集(株式会社キューテック)
チーフエディター
インタビュー 04/03/25

○ビデオ編集という作業でやっているのはどういったことなのでしょうか?

「一言で言えば後処理ですね。テロップを作成して入れる。画像処理や合成を加える。それぞれの素材、編集後の撮影上がりや、声優さんや効果音などの音素材をまとめて、放映用やDVD用に編集し、最終的にオンエアできる状態に仕上げる、ということをしています」

○アニメ『プラネテス』に関わることになったキッカケはどんな風だったのでしょう?

「もともと谷口監督とは、『ガサラキ』(98年)からの長い付き合いなんです。その後、『無限のリヴァイアス』(99年)、『スクライド』(01年)、今回の『プラネテス』とずっとやらせていただいています。その意味では河口プロデューサーがおっしゃっていた『谷口組』と言えばそうなのかも知れませんね」

○今回も谷口監督の指名だったと聞いています。

「それはありがたいですね。今回の作品で最初に谷口監督と話した時は『新作やるから、またやろうよ』みたいな雰囲気だったですね。以前、谷口監督に『言葉が通じる』と言われたことがあるんです。僕の仕事は、監督から伝えられたイメージ、それは抽象的な表現だったりするんですが、それを具体的に形にすることなんです。実際に画面自体に処理を加えたりということもしますからね。多分その辺のやり取りの感覚が合うんじゃないでしょうか。ただ僕の場合は、監督の本意を汲んでさらに飛躍させたいと思っています。谷口監督はその辺を好きにやらせてもらえるので楽しいですね。もっとも、僕と初めてやる河口プロデューサーは不安だったかも知れませんが(笑)。やっぱり一回組んだことがある人間の方がやりやすいでしょうし」

○画像処理や合成というのは具体的には何をされているんですか?谷口監督が『山手エフェクト』と呼んでいる処理があったりするみたいなんですが…。

「正式にそういう名前がついているわけじゃないんですが、監督がいう『山手エフェクト』というのは回想シーンなどで使っている処理のことです。主線だけかすれさせて、色の部分をぼやかしているんですが、『プラネテス』では7話のハチマキが回想するシーンでそれをやっています。その処理以外にも、12話でたくさんモニターが並んでいるシーンがあるんですが、あれは実はぼやかしたり、乱したり、ものすごく合成しているんですよ。谷口監督がこういう風にしたいというイメージを表現してみたんですが、あれはうまくいったなと思っています」

○オープニングもかなり色々やっていらっしゃるんでしょうか?

「そうですね。オープニングには思い入れがありますね。例えば、始めの方のロケット打ち上げの失敗カットがあるんですが、わざと古いフィルムの様な感じにしているんです。もともとのカットの上がりもそういう雰囲気になっていたんですが、さらにゴミをつけたり、フィルムを回す時のガタりを追加したりしてます。あと、谷口監督はオープニングにもストーリー性を持たせるという意味で、けっこうオープニング映像を途中で変えるんです。そんな時、ただ変更箇所を入れ替えるだけじゃ、ということで勝手にいたずら心でちょこちょこいじったりしますね。いい意味で驚いてもらえると嬉しいんです。谷口監督はそういうのを見てみて、良ければOKしてくれるんですよ。ユーリのコンパスにハレーション入れたり、走っていくキャラの影の色をいじったりしましたね。他にもいろいろやっていて、そういう意味でオープニングは集大成みたいな感じです」

○オープニングのラストのタイトルロゴの文字、予告でサブタイトルが集まってくる文字も作られているとか。

「タイトルロゴは、最初に6パターンぐらい作って絞り込んでいきましたね。監督からイメージを聞いて、文字を作って、動きのタイミング等は好きにやらせてもらいました。1話のタイトルロゴの出方が以降の話数と違うのですが、その内のひとつを使用しているんです」

○ビデオ編集の仕方というのは作品によって違ったりするんですか?

「制作会社や監督によって、画像処理を全く入れなかったりということはありますね。テロップ入れて、フォーマット組んだら終わりという状態まで作ってあるんです。逆に、こちらの方が少ないですけど、ビデオ編集時の処理を見込んで作っているところもあります。ビデオ編集ではかなりできることが多いんですよ。ここでしかできないこともありますし、やりたいという気持ちもありますね。やはり、出来上がりの幅が広がると思いますし、その辺は、撮影の方と分業できるところもあるかもしれません。『プラネテス』はかなり処理を入れている方ですよ」

○キューテックさんではアニメ以外のビデオ編集もされるんですか?

「しますよ。CMやバラエティ番組の編集、音楽のライブ映像をやったこともあります。フィルムで制作した作品の、画面のゴミ取りをしたりもします。ただ、最近はアニメの仕事が多いですね。うちでもアニメしかやったことがない者がいるかも知れません」

○最後にビデオ編集という仕事のやりがいは何でしょうか?

「僕はアニメの編集だけでなく、編集の仕事が非常に面白いと思っています。意見を取り入れてもらえることも多いし、絵としてプラスアルファを足せたらと考えているんです。それに僕は自分のことを、言われたことをやるオペレーターではなく、自分の感覚を上乗せできるエディターだと思っています。合成や編集のつなぎとかの面で、みんなで作っているものに参加していきたいですね。また、デジタル放送化など日本の放送形態が変わってきていますから、常に何か新しいことをやっていかなければならないと心がけていますし、楽しく挑戦しがいのある仕事です。『プラネテス』も後半になって乗ってきて、楽しくやらせて頂いてます」

○今後こういう仕事をやりたいと思っている人に必要なものは何でしょうか?

「ここにある機材や、やっている作業を見ると、憧れの様な感じを持つ人もいると思います。実際、僕もそうでした。しかし、うちに来る新人でも、そういう憧れや夢に破れて辞めていく人がとても多いです。専門学校や四大を経て入って来る人が多いんですが、少なくとも1年は勉強や修行の為がんばる覚悟が必要です。学校で習得することは役には立ちます。例えば基礎用語など、知っていれば理解も早くなります。ただそれだけでは即戦力には成り得ないのです。また、メディアも多様化していますし、一つのことだけでなく、柔軟に広く吸収していく姿勢が大切ですね。専門知識は必要ですが専門のみではいけないということです。監督や演出の意図を形にしていくので、コミュニケーションをとれるということは特に重要ですね。

ありがとうございました。

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