テクノーラ社-社内報
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■ INTERVIEW : 012  

高倉武史
メカニカルデザイン

インタビュー 04/02/25

1.アニメ『プラネテス』に関わることになったキッカケと、仕事の分担を教えて下さい。

コンセプトデザインの小倉氏、及びサンライズプロデューサーの方からの紹介でプラネテスに参加させて頂きました。工業デザイン好きの私としては大変興味深い作品だったので、かなり緊張感をもって取り組んでます。担当はTOYBOX2やフィッシュボーン、宇宙服関連、金具、宇宙ツールその他こまごまとした機械類です。巷ではプロップデザインと呼ばれてますが、個人的には「作品内工業デザイン」と勝手に呼んでます。

2.『プラネテス』のメカニックデザインで、他の作品との世界観の違いなど気を付けたことは何でしょうか?

作品を手がけるに当たってのコンセプトは本来の意味での「SF」デザインです。もちろん演出上必要な脚色はしますが、プラネテスという世界でのリアリティをできる限り追及してます。原作で表現されていない部分は特にバランスを考えながらデザインしてます。他の作品では主に外観に力点を置きますが、当作品では見えない部分にもこだわりを持って作業しました。TOYBOX1のコクピットなどはスイッチのひとつひとつまで機能を考えてます。一方でちょっとした小物、カメラや乗り物といった日常アイテムはテクノロジー感と同時に時代背景、社会性などを意識したつもりです。

3.今作品でデザインされた中で、難しかった、おもしろかったものはありますか?

正直、殆どのアイテムが難しかったです。登場するものほぼ全て、素材+構造+生産技術+プラネテス世界観+演出意図を吟味してデザインしています。いってみればその場その場で設計図を頭の中に、もしくはラフとして描き、バーチャル生産しなければいけないので時間的に苦しかったです。出来上がったものが納得のいくデザインになったときの達成感はなかなかのものです。しかしうまくいかないケースもあって苦しいときもありました。例えばデブリ課のEVAスーツのバックパック。この箱の中、作品中では全く描かれませんがバッテリーやらエアコンやらぎっしり詰まってる設定です。でも「この箱のデザインに何時間かけたんだ?」という批判が聞こえてきそうで怖い。何しろ「ただの箱」なんです。 出来上がったものだけをみると何かサボってるみたいで…

面白かったというより嬉しかったことは、デザインを受け取ったスタッフが存分に動かし描いてくれたことです。個人的には壊してくれてもうれしいくらいです。このあたりはアニメならではの感覚かも。(特撮だと作ったものが本当に壊れちゃうから寂シイ…)抜けの多い描きづらいデザインをあんなにかっこ良く動かしてくれたスタッフにはただただ感謝です!


4.メカニックデザインという仕事のやりがい、また今後そういったことをやりたい人に向けて必要なものは何でしょうか?


やりがいという意味では自己満足が大部分を占めているかもしれません。決して仕事として割が良いとは言えないですし、作品が終われば埋もれていくデザインも少なくありません。しかし、良い作品に自分のデザインが参加できたということ、アニメという共同作業の中で少しでも協力ができたこと、これが一番の喜びです。また、副次的に玩具がでたり、本が出たりすると喜びは倍増します!

極論ですが、本気でメカデザイナーになりたいという人なら誰でもなれます。意志さえあれば、良いものは必ず作れますし、たとえ問題にぶつかっても解決する工夫ができるでしょう。続けていれば知識や経験、コミュニケーション、ネゴシエーション能力も蓄積されるので時間はかかっても某かのスタイルはできあがると思います。ただ、さらに上を求めるなら絶対に必要になるものがあります。それは何を隠そうタナベ解くところの「愛」です。技術と意志、そして愛があれば…さあ、もう一度プラネテスを見ましょう!ちなみに、もう愛がある、という人は技術を磨いてくださいネ(タナベみたいに)

ありがとうございました。

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