テクノーラ社-社内報
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■ PHASE-12 背景


 

 

「というわけで、動画、仕上げの発注もなんとかできたね」
「モモモン、ムホ(350カットもの量を捌くのは大変だな。どのカットが何処にあるのか忘れちまいそうだよ)」
「でも、キャラクターの絵が出来上がっても背景がまだなんだよね」
「ムホムホホ(前にBG原図っていうのを作ったよな)」
「そういうわけでクレアさん、いつもの解説お願いします」
「…そういう安直な振りはどうかしらね。ま、ともかく背景だけど、BG原図を作ったところで、セルの工程とは別ルートで作業を進めることになるのよ」
「いきなり画用紙に描くんですか?」
「そんなわけないでしょう。まず、キャラクターと同じ様に、背景にも線画の設定があるの。あるシーンの背景・舞台がどういうものか、各セクションのスタッフがわかるように作るのよ。これは美術監督が描くわ」
「それを見ながら描くんですね」
「それだけじゃ色がわからないでしょう。線画の美術設定に色をつけて、質感だったり、昼の色、夜の色などを決めた美術ボードというのを作るの。その上で、カット内容の指示の入ったBG原図をもとに演出と打ち合わせをして、実際の背景作業に入るのよ」
「そうか〜。綿密ですね〜。そこまで決まっていれば簡単ですね!」
「…薄っぺらいわ」
「はい?」
「あなたのアニメの認識は薄っぺらいのよ。簡単なわけないでしょう。背景から伝えられる情報量はとても多いの。色や質感はもちろんだけど、そのシーン・作品の空気感は背景によって作られるところが大きいのよ」
「な、なるほど〜(クレアさんの“薄っぺらい”はへこむな〜)」
「ムホホムホ(確かに背景がきれいだと絵に迫力がある気がする)」
「描き込んであればいいというものではないのよ。その作品に合ったものであることが重要ね。いわゆる描き込んだ背景でなくても、良い背景というのはあるわ」
「ムホ(ムゥ。奥が深いな)」
「今、背景さんに電話したら、50カット分位上がってみたいです」
「じゃあ、回収にいってきて」
「はい!行ってきます」
「あっ、ちょっと待って。これを持っていきなさい」
「ムホムホホ?(この縦40センチ、横80センチ、深さ30センチ程のプラスチック製の箱、蓋つき、は何?)」
「背景は紙に描かれていて、大きさも大きいのがあったりするのよ。例えば車の窓の外の風景が流れていく背景は、長い背景を作ってそれを引いて撮影してるの。そういうのを入れるためと、雨が降ったりして背景が濡れてしまわないように、もしくは傷をつけてしまわないように箱にいれるのよ。でも最近はデータで納品してるところも増えてきてるけどね」
「ム〜ホ、ムホ(う〜ん。慎重に扱わなくちゃいけないのか)」
「あと以前、背景にコーヒーをこぼした進行がいたって聞いたことあるけど、そういうことはしないように。耐え難いお仕置きが待ってるわよ」
「(クレアさんてストレスたまってるのかなあ)」
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