テクノーラ社-社内報
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■ PHASE-11 色指定・ペイント(仕上げ)


 

 

「ムホホム〜(やっと動画上がったよ。ハチマキのやつ、人生悩みながら描くから長い長い)」
「でも、さすがの上がりですよね。クレアさん」
「そうね。ハチは人間的には少し問題あるけど、仕事はちゃんとするから」
「ムホホ、ムン(で、この後はどうするんですか?クレアさん)」
「次はいよいよ着色します」
「セルを使うんですか?」
「いいえ。今はほとんど全てのアニメがデジタル化しているの。動画をセルに写し取って、それに筆で色を塗っていくという作業は、今ではやっていないわ」
「とすると…」
「動画をスキャナーで取り込んで、その画像に色を置いていくのよ。『プラネテス』ではスキャナーで取り込む時には「トレースマン」というソフトを、色を塗る時には「ペイントマン」というソフトを使用しているわ。雑誌なんかに使う絵の時には「フォトショップ」を使っているわね。この工程を「ペイント」もしくは「仕上げ」と言っているの」
「デジタルの方がいいんですか?」
「少なくとも、作業効率が大幅に上がったのは確かね。色を決めるときの色数の制約も減ったし、実際に色を塗る時間も格段に早くなったわ。絵の具が乾くのを待つ必要も無くなったしね」
「ム〜ホ、ムホ(なるほどね〜。で、これも色を塗る会社や、個人に出すわけか)」
「でも、この動画のどこに何の色を塗ればいいのかわからないですよね」
「そうよ。だからカットごとに色を決めていく必要があるわ。その作業を色指定というの。まず、作品全体の主要な色を決めたり、各話の色指定担当者のチーフとして全体を統括する色彩設計という人がいて、さらに各話担当の色指定がたつの。美術(背景)と連動しつつ、昼の色と夜の色を変えたり、受ける光の強さで影の色を変えたりする指定を入れるほかに、その話にしか出てこない物の色も各話の色指定が決めたりするのよ」
「指定するというのは、どうやるんですか?」
「動画にペンで指定を書き込むのよ。塗られている色によって、全く印象が変わってくるし、凄く重要な作業になるわね」
「ムホ〜、ムホホ(そうか〜。勉強になるな〜。で、今回は誰が色指定をやるんですか?クレアさんっ)」
「(ほんと、ノーラくんてクレアさんには従順だな〜)」
「今回は、そこにいるエーデルガルド・リヴェラさんです」
「どうも」
「モモンモ(いたのかよ!)」
「………等身大ノーラくん」
「モ、モン(な、なんだよ、こいつ)」
「エーデルはノーラくんグッズが大好きなんだよ」
「等身大はレアですから」
「ムホホン、ムホ、ムムホ!(グッズとかレアとか、そういうんじゃないぞ、オレは!ちょ、ちょっと待ってくれよ。何?モノ扱いか?おい!雰囲気悪いぞ?なんか!)」
「よろしくね。エーデル」
「エーデルはとても優秀な色指定よ。早い、ミスが無い、センスもいいと、文句ないわね」
「ムホホ、モン(いや、オレは文句ありっていうかですねっ!クレアさん!)」
「……」
「!!(戦慄)」
「それじゃあ、早速、この動画上がりに色指定入れてもらえる?エーデル」
「時間ですので、帰らせて頂きます」
「えっ?」
「エーデルは就業時間きっかりで働くのよ」
「ムモ、モン、ムホホン!(ほ、ほら!このスケジュールに追い詰められまくりのアニメ業界において、それは、ちょおっと、どうかと思わないですか!)」
「前もって話しもしておかないで、いきなり仕事やれっていうのはどうかしら?エーデルにも予定があるでしょう。今日どうしても終わらせなきゃいけないわけでもないし、明日やってもらいなさい。次からは、ちゃんと素材がどう動くか各担当者に連絡しておくのよ」
「それでは失礼します」
「ムホ〜、ムホ!(ああっ!なんか、目が一瞬怖いんだって!だから!…もう!)
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