テクノーラ社-社内報
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■ PHASE-9 原画


 

 

「…というわけで、BG原図は取り終わったので、レイアウトを原画さんに戻してきます!」
「はい。いってらっしゃい」
――――――――――ギガルト私室前
「……ムホホムホ(なるほど。上がったレイアウトを一度回収して、演出、作監がチェックしてから、また戻すわけか)」
「こうすれば、意図と違ってたら早い段階で直せるもんね。原画までやってからだと大変だよね。……ギガルトさ〜ん。レイアウト戻しに来ました〜」
「おぉ〜。エンジェル〜。もう戻ってきたか。早いな〜」
「はい!原画作業、よろしくお願いします!」
「まかせておけ。…ところで、おまえらレイアウトのことは全然知らなかったが、原画についても知らんだろう」
「これがまた全然わからないですね〜」
「ははは。それなら教えてやろう」
「ムホホムホホ(なんだ、なんだ。教えてやろうなんて、やらしいオヤジだな)」
「原画ってのはな、レイアウトを元に動きの大事なところを描き起こす作業のことだ」
「大事なところってどんなところですか?」
「そうだな。歩いてるカットなら、左右の足がそれぞれ着地してるところ、とかだ」
「ムホンモホ(“とか”って決まってないのかよ)」
「決まってないぞ。どこを描いてもいいんだ。だから動きに原画担当者の個性が出る」
「えっと、動きってどうやるんですか?アニメって絵が何枚もあるのはわかるんですけど、よくわからないんですが」
「アニメが、カットというシーンをバラした単位に分けられるのは知ってるな?それぞれのカットは3秒とか6秒とかの長さがあるんだ。それらが集まって30分になる」
「ふんふん」
「そこでさらに1秒を24のコマに分けて作業するんだ。だから3秒のカットだったら3×24=72枚の絵が必要になる」
「ムホホホ(あ〜、なんか数学くさくね〜?うぜ〜)」
「ノーラくん、社会人としてその対応はどうかと思うよ」
「でだ、1秒24コマに対応する絵を、どの順番で画面に出していくかという一覧表をカットごとに作るんだ。それをタイムシートという。略してシートともいうな」
「じゃあ、原画の人は、絵と、それをどう画面に出すかというタイムシートを書くんですか」
「そうだ。だから原画は、どこを大事なところとして描くか、その絵と絵の間の時間をどうするかによって受ける印象が大きく変わってくる。同じ3秒で腕を上げ振り下ろす芝居でも、1秒半で腕を上げ1秒半で腕を下ろすのと、2秒半かけてゆっくり腕を上げ半秒で素早く下ろすのでは、全く違う印象になる」
「モ〜ン(まあ、そうだな)」
「それだけじゃないぞ。素早く腕を下ろすと力の入れ方が変わるから、絵の描き方も変わってくるわけだ」
「それじゃ、全然違うものになりますね〜」
「そう。だから重要な作業なんだよ、原画ってのは。ついでに言うと、描くだけじゃなく、それをチェックする演出や作監も、レイアウトと同じくらいしっかりチェック作業をするんだ」
「ムッホホホ、ムホ(しかし、まあ、1秒につき24枚も絵を描くのは大変だな)」
「原画担当者が描くのはポイントになる絵だけだ。その間は動画担当者が描く。それに予算や時間の関係で2コマとか3コマ連続で同じ絵を使っていたりする」
「それだとカクカクして見えないんですか?」
「人間の目は24分の1コマを正確に認識できないから、十分動いて見えるんだ。まあ、内容によっては1コマ1コマ動かす時もあるがね」
「絵を描く技量だけじゃなく、頭も使わなくちゃダメなんですね〜」
「ムホ〜、ムホ〜(金を稼ぐのは楽じゃないわな〜。楽して稼げる仕事をしたいね。なんちゅ〜の?のほほ〜んとしてると、いつの間にか金が増えてるみたいなやつ)」
「ノーラくん、人としてそれはどうかと思うよ」
「ははは。じゃあ作業に入るから、あさってまた来てくれ」
「はい!よろしくお願いします!」
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