テクノーラ社-社内報
>> TECHNORA TOPへ
>> アニメ制作課 TOPへ
■ PHASE-8 BG(背景)原図


 

 

「はい。レイアウト作監上がり」
「ありがとうございます!」
「ム〜ホ…ムホホ(なんか…あんまり手が入ってないな。ちゃんと仕事してんのか?)」
「なっ、なに言ってんの!?ノーラくん!」
「これはね、部分修といって、目の雰囲気など部分的に修正を入れているのよ」
「そうそう。ギガルトの上がりは問題ないから、これくらいで十分なんだよね〜」
「ムッホ(なんだ。ちゃんとやってんのか)」
「今度…失礼な口きいたら…あなたの体毛を…まだらに染めるわよ」
「ムホホ…(まだらって、ピンクと緑だけは…)」
「えっと、こ、このレイアウトの作監上がりはどうしたらいいんでしょうか?」
「これは各原画さんに戻して、引き続き原画作業に入ってもらうのよ。でもその前にBG原図をとっておいて」
「BG原図って何ですか?」
「背景(BG)原図のことよ。アニメでは、キャラクターなどの動きの絵の他に背景が必要なの。それは原画とは別に、背景の制作会社に別途発注するのよ。レイアウトには背景情報が描かれているから、それを元に背景を起こすんだけど、とりあえずレイアウトのコピーをとって」
「はい。………とりました」
「そうしたら、どの部分を背景会社で制作するかわかる様に、背景以外の所、昔で言うところのセル画の部分に、暖色系の色鉛筆で色を塗って」
「はい。………塗りました。でも何で暖色系なんですか?」
「寒色系は別の用途で使うからよ。BG(背景)もカット単位で制作するけど、必ずしも1カットに1枚のBGというわけではないの」
「はぁ」
「例えば、荒野に人が立っている場合、大雑把に絵としては、地平線までの地面のBGと人物のセル画ということになるわね。でも手前に岩を配置して、岩の向こうにいる人物という絵を表したい場合には、地面のBGの他に、岩だけを切り取ったBGを作るのよ」
「岩だけのBGですか」
「そう。そういうBGをBOOK(ブック)というの。一番下に地面のBG、その上に人物のセル、その上に岩のBOOKを持ってくると……あら、不思議、荒野に立つ人物とカメラの間に岩がある様に見えます」
「ムホホムホ(それと、レイアウトを寒色系で塗るのとどういう関係があるわけよ?)」
「そのBOOKの部分を寒色系で塗るのよ。そうすると背景会社は色をつけられていない普通のBGと、寒色系で塗られたBOOKを制作することになるわね」
「暖色系のキャラクターの部分は原画以降の作業で作るわけですね」
「そういうことね。コピーしたレイアウトに色を塗ったら、カットによってはまだ他にもやることはあるけど、このカットのBG原図は出来上がり。これに話数とカットナンバー、BGに対する指示書き(原画・演出が書く)を明記して、背景会社に持っていってBG(背景)を発注するのよ」
「はぁ。これを全カット作るんですね〜」
「そうよ。今回は350カット分あるわね」
「ムホンムホン(でも、これって各カットのことがわかってないと間違った発注をしたりするんじゃ…)」
「その通りよ。だから制作進行はその話数のことを完璧に把握しなければいけないの」
「ムホ、ムホ(マジすか、それってキツくないすか)」
「それが仕事なのよ。だからこそ、制作進行から演出、監督になる人が多いわけね」
「BG原図は出来ました。BG(背景)はどれくらいで描けるんでしょうか?」
「背景作業期間は、TVシリーズではBG原図を入れてから“基本的に”4週間よ」
「ムホ…(引用符に何かを感じるが…)」
「なぜか作打ちから放映までが4週間のこともあったりなかったり…」
「もっと短いこともあったりなかったり…」
「二人とも遠い目になったりならなかったり…」
>> PHASE-9「原画」へ